恐山 「心霊体験」



昔の恐山 地蔵堂  恐山といえばまことしやかに噂されるのが「心霊体験」や「心霊現象」です。1980年〜1990年代におこった心霊ブームで恐山は一躍脚光を浴びテレビや雑誌で取り上げられ、日本一の心霊スポットなどともいわれるようになりました。さらには権威あるウェブサイトや観光雑誌にまで「遊び半分で訪れると祟られる」と記載される始末です(現在はこの記述は削除されています)。では実際のところはどうなのでしょうか?現在は一時期の心霊ブームも収まり以前ほど騒がれなくはなりましたが、それでも恐山にまつわる不思議な話は後を絶ちません。私自身心霊体験は無いのですが、以前番組のロケで恐山の境内を裸で大はしゃぎしていたアイドルタレントをテレビで見て「こんな大騒ぎして悪いことがおきなければいいけど」と心配していたら、その後すぐにそのアイドルタレントは足(腕だったかもしれません)を骨折してしまったこともあります(注:そのアイドルは現在は元気に復活しお茶の間の皆さんに笑いを振りまいてます 不祥事により2018年に芸能事務所との契約を解除しました)。
 かたや一方で毎年多くの観光客が恐山を訪れていますし、宿坊や休憩所では多くの方が従業員として働き業者の方も数多く出入りしていますが、そのほとんどの方は何事も無く無事にすごしています。
 また恐山を訪れた観光客も多くの方が「死後の世界というイメージがあり敬遠していたが、実際の雰囲気は静かで美しく心安らかに祈ることができた」と言っていまし、。最近では現実離れした美しい光景に「恐山はパワースポット」と言う人も増えてきています。実際のところは「霊場恐山もすっかり観光地化してしまって以前ほど心霊体験の話は聞かれなくなったが、それでも毎年いくつかの心霊体験や心霊現象は話題になっている」というのが現状のようです。

一般的にいわれていることは
恐山境内の光景 そもそも恐山は死者の霊が集まるところとされており、このため本来ならお寺には存在しないといわれているこの世に未練を残し成仏できない霊もたくさんいるのだそうです。これらの霊が訪れた観光客に心霊体験や心霊現象を与えたり、または恐山を離れた後もその人に憑いていって色々と不思議な心霊現象を起こすとされています。また憑いていった霊は大抵はしばらくすると離れていくし重大な霊障など与えることは無いのですが、恐山境内で禁止されている行為や罰当たりな行為をした人に対しては少々きつめの霊障を与えることがあるそうです。

心霊体験・心霊現象の法則性


 恐山の心霊体験には一種の法則性がありその中には科学的に説明できるものもあれば、説明できないものもあります。以下に代表的な例を列記してみます。

ケース1宿泊者や当直者が夕方から夜にかけての時間帯に、境内にある恐山温泉で霊のようなものを見たという報告事例。
恐山温泉 これは昔からいわれているもっとも報告事例が多い心霊体験ですが、そもそも見たものが霊魂であるかどうか確認はできていませんし、霊が集まるといわれている霊場のど真ん中にある小屋に夜中一人いれば誰でも不気味な気分になるのは当たり前です。湯船から立ち上る湯気を霊と勘違いしてもなんら不思議ではありません。私自身ある湖に夜中にでかけ友人が吸っていた煙草の煙を人の姿と間違え大騒ぎした経験があります。しかし報告事例は多数ありその全てを勘違いとするのも少々無理があるような気もします。

ケース2恐山参拝中に頭痛、寒気、めまいを覚える。
火山性のガスで真っ黒になった岩 頭痛、寒気、めまいというのは専門家にいわせると心霊スポットに足を踏み入れた際に起こる代表的な現象なのだそうですが、恐山では境内に足を踏み入れた際に頭痛や寒気、めまいを訴える人が後を絶たないのだそうです。これをもって霊の仕業だとしているわけですが、恐山一帯は火山帯で境内でも至る所から火山性のガスが吹き出ています。その規模は周囲に植物や小鳥の姿が見えないことからも察しがつきますが、この火山性のガスを吸い込むことによって頭痛、寒気、めまいといった症状を引き起こすことがあります。恐山で頭痛、寒気、めまいを覚えた際、それが霊の仕業によるものなのか火山性のガスが原因なのか判断は個人にゆだねますが、なんでもかんでも霊のせいにしてしまうのも問題だと思います。

ケース3恐山境内で禁止されている行為や非常識な行動をする。
 これは・・・・もう絶対にやってはいけない事ですね。逆に言えばこれらの行為をしなければ霊場恐山でも問題なく旅の思い出をつくることができると思います。このケースは特に大事な事ですから下項で詳しく説明します。

恐山境内でしてはいけない行為
 まず最初に恐山は死者の霊が集う霊場ですから、基本的に浮かれた気分で散策するのではなく、霊に対して敬い畏怖の念をもって接する気持ちで参拝しましょう。このことを基本に境内でしてはいけない行為を以下に紹介します。

1.境内で大騒ぎをしたり派手な格好でうろつかない
 前項でも骨折したアイドルの例を挙げましたが、境内では馬鹿騒ぎをしたり上半身裸や水着といっただらしない格好で散策をしてはいけません。自分の菩提寺で大騒ぎをしたり派手な格好で徘徊したりしませんよね。恐山でも同じ事です。

2.閉まってあるお堂の扉を勝手に開けたりしない。
 お堂といっても扉のあるお堂は境内にはそれほどないですし、お堂には寺の使用人の方がいるので勝手に開けるという場面は少ないと思いますが、仮に扉が閉じてあった場合勝手に開けてはいけません。誰だって親兄弟といえども自分の部屋をノックも無しにいきなり開けられたら嫌ですよね。これと同じ事です。ちなみに恐山のお堂に納められているのは衣服を中心とした故人の遺品と聞いています(なお恐山のお堂はカラス対策の為、格子扉で閉じられている場合がありますが、この場合は格子戸を開け中に入りお参りをしてもよいそうです。ちゃんと張り紙がしてあります)。

3.積み上げられた石を崩さない。
恐山 賽の河原の石塔 恐山の境内では石を積み上げた供養塔が至るところで見られます。これは幼くして亡くなった子供の供養の為に遺族が積み上げたのものですので、おもしろ半分で崩したり、別の石を乗せたりといった行為は絶対にしないでください。また指定された順路をそれて歩くと故意ではなくても誤って石積みにつまずき崩してしまうことがあるので参拝の際には指定された参拝路を歩くようにしましょう。

4.境内の石や砂を持ち帰らない。
恐山極楽浜の砂と石 色々調べた結果この行為が一番危険な行為のようです。恐山境内の石や砂は白くとてもきれいですのでついつい持って帰ってしまいたくなるのですが、まず恐山菩提寺が観光保護を理由に石や砂の持ち帰りを禁止していますし、また石や砂というのは人間から見て「とんでもないもの」が憑いている場合が多いとされ(逆にとてもありがたいものがついている場合もあるし不思議な力を持ったパワーストーンもある)、石や砂に限らず境内に存在するものは持って帰るような行為は慎んだ方が良いようです。もちろんお守りやお札は持ち帰りオッケーです。
 ちなみに恐山一帯には硫黄鉱脈がありその昔は恐山の事をよく知らない県外の労働者を雇い採掘もされていました(現在は廃鉱となっています)。坑道の一部は恐山境内にもあるのですが、何故かその坑道で作業をすると幼い子供達の笑い声が聞こえ作業にならなかったそうです。しかたなく笑い声を紛らわす為に楽器で大きな音を流したのですがそれでも効果はなく、皆不気味がって結局境内における硫黄の採掘はできず、坑道はそのまま放置されてしまったのだそうです。


5.仮に霊を見てしまったら
 恐山は死者が集まる所。ですから大切な人や我が子を失って間もない方などが亡くなった人に会いたくて恐山を訪れることがよくあるのですが、死者や霊を見ても後を追いかけたり声をかけてはいないと言われています。これは恐山は亡くなった方を供養する霊場であり死者に会う事を目的とした場所ではないことからきていると推測されています。そもそも生きている人が死者と会うことは古今東西ダブーとされていることですし、ギリシャや日本をはじめとした神話の世界では死者に会おうとすると全て不幸な結末に終わっています。恐山においても亡くなった妻に会いたくて宿坊に泊まり、風呂場から外を眺めるとで妻と思われる女性が歩いていたので声をかけたら恐ろしい形相で睨まれ(この事案の女性は妻ではなく別の女性だったようです)、男性はその恐ろしさに夜明けとともに恐山を後にしたが、その後精神を病み亡くなってしまったといった話や、亡くなった我が子に会いたくて恐山を訪れ、念願叶い我が子を見つけるが、その子は親の顔を見るなり「鬼が来た」と叫んで一目散に逃げていってしまった事などが伝えられています。もっとも後者の方は最愛の我が子に「鬼」と呼ばれるも再開できたのだから吉とし満足したとも伝えられています。
 これらの霊は逢魔が時(「おうまがどき」1日が終わる日没前後)になると地蔵堂(本堂)へ向かうとされ、目撃例も逢魔が時の時間帯が多くなっています。
 以上色々書きましたが恐山は霊を見てみたいなどといった不純な動機で訪れるような場所でないことだけは確かです。



恐山の砂と石

 美しい景観を形作っている恐山の真っ白い砂と石。これらは環境保全を理由に持ち帰りが禁止されていますが、実は理由はもっと別なところにあるのではないかとまことしやかに噂されています。
 その別な理由とは「砂や石を持って帰ると大変なものも一緒に憑いてきてしまうから」というものです。実際霊場と呼ばれている所や霊が集まるとされている所では現地の砂や石の持ち出しが禁止されている所も多く、もっとも有名な所では太平洋戦争最大の激戦地のひとつで多くの戦死者がでた「硫黄島」などがあります。島は現在自衛隊の基地が設けられ一般の方は訪れることはできませんが、基地の建物には何故か「開かずの間」と呼ばれる絶対に開けてはならない部屋があり、自衛隊の方が島を出るときは入念に砂を払い、たとえ小さな砂粒ひとつでも島外に持ち出すことは禁止されています。なぜこのように入念に砂を払うのかその理由は明らかにされていませんが、以前、海上自衛隊の方に聞いてみたところ石や砂を持ち帰ると不吉なことや心霊現象がおこり、なかには行方不明になった方も多数いるからだと教えてもらったことがあります。恐山で砂や石の持ち出しが禁止されているのも、実は皆さんの身に不可思議な事態が起こらないようにする為なのかもしれません。


総 括
恐山山門前の光景 ここまでHPを見てくださった方々が一番気にしている事は「はたして恐山に観光目的で訪れてよいのだろうか?祟られたりしないだろか?」ということだと思います。
 そしてここから先は筆者個人の意見です。「恐山は地元の青森県民でさえも心奪われるほど美しい光景が広がる霊場です。決して観光地ではありませんが、シーズン中は地元の警察やバス会社、タクシー会社も総出で観光客の受け入れ態勢を整えてますし、境内には観光ガイドやお食事処、お土産店まであります。このようにお寺や地元の人が一丸となり観光客の受け入れ体制を整えているのですから青森県を訪れた際には是非とも恐山も訪れてもらいたいと思います。ただし前述した『境内でしてはいけない行為』は絶対にせず死者を敬い畏怖の念を忘れることなく参拝してもらいたいと思います」・・・あとお賽銭も忘れずに(^o^)。仏様やお堂は結構ありますから小銭はたくさん用意しておいたほうがよいですよ。


それでも心霊体験や心霊現象を体験してしまった場合は・・・


 基本的には前述の「境内でしてはいけない行為」をしてなければ霊がついてきて多少驚くことがあっても実害は無いしそのうち離れていくといわれていますが、気になるようでしたら近くの神社を参拝されればよいと思います。そして一番確実な除霊方法・・・・・それは「もう一度お山(恐山)に行く」これに限るのだそうです。地元で昔からいわれていることですからまず間違いないでしょう。恐山から人の後をついてきた霊も再び恐山に行くことによってお山に帰っていくと信じられています。