岩手県 北限の海女



 北限の海女とは岩手県久慈市の小袖地区で昔ながらの素潜り漁を行っている海女さん達のことで、昭和30年代に放送された小袖海岸の海女さん達をモデルにしたラジオドラマではじめて「北限の海女」という表現が用いられるようになりました。2009年になると若い女性が新人海女として活躍している様子が紹介され(美しすぎる海女さんとして一世を風靡しましたが現在は引退しています)、国内はおろか海外にまで名を知られる町となりました。この海女さんブームにさらに追い打ちをかけたのが久慈市を舞台にしたNHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」です。ドラマが放送された2013年度は想像以上の観光客が訪れ、久慈市も急遽夏しか営業していない観光施設(海女センター)をGWから営業したり、駐車場やバスの整備をするなど対応に大わらわでうれしい悲鳴をあげることとなりました。 


目 次

北限の海女
 海女さんの服装
 北限の海女とは
海女さんの実演
 実演の光景 
 実演会場
 リアルあまちゃん
小袖海女センター 
小袖海岸
 小袖地区
 夫婦岩
 つりがね洞



北限の海女

 
北限の海女 実演をする北限の海女。久慈市小袖海岸の海女さん達は昔は小袖海岸でウニやアワビを採ったら峠を越えて久慈市まで売りにきていたそうです。現在は観光目的で漁をするのがほとんどで、服装も昔のまま「かすりはんてん」を着ています。
  蒼く澄んだ三陸の海でかすりはんてんを着て素潜り漁を行う海女さん達。北限の海女さんは海女センターの目玉だったのですが2013年からは周囲の風景にカメラを向ける観光客も増えたそうです(理由はドラマあまちゃんに登場した光景が目白押しだから)。
北限の海女さんの実演と観光客


北限の海女

海女さんの服装

久慈市 北限の海女さんの服装  海女さんの服装。昔は上半身裸で下半身のみ服を着ていたそうですが、注目度が増すにつれ、現在の「かすりはんてん」に赤い帯、手ぬぐいを巻いた頭に磯眼鏡というスタイルになったそうです。

海に続く階段

 小袖地区にある海に続く階段。海女さん達はこのような階段を下りて海に向かっていきます。光景は「海女センター」のもので、ドラマ「あまちゃん」ではヒロイン天野アキが祖母天野夏と初めて出会う場面をはじめとして数多くのシーンで利用されました。なお小袖地区にはこのように海に降りていく階段が何ヶ所か整備されています。
久慈市 小袖海岸の階段



北限の海女さんが活躍する小袖海岸 北限の海女さん達が活躍する小袖地区の光景。切り立った断崖に無数の岩礁が点在し天然の漁場となっています。北限の海女さん達も昔は小袖地区全域で漁をしていたのですが、時代と共に漁をする海女さんから観光イベントの海女さんへと様変わりし、現在は海女センターがある小袖地区を中心に漁を行っており、海女さんの人数も減少傾向にあるそうです。

北限の海女

北限の海女 とは

これを知っていれば久慈市観光も一段と面白くなる・・・・かも 

そもそも北限の海女さんって?
 NHK朝ドラ「あまちゃん」では「北の海女」という名前で登場している久慈市の北限の海女。日本では西日本を中心に海女さん文化がありますが、現在海女さんは千葉市から北は650kmほど先に行った久慈市にしか存在していません。この突出して北に存在する久慈市の海女さん達のことを「北限の海女」とよんでいるのです。なお素潜り漁は何故女性が多いのかというと、女性の方が男性よりも3倍ほど長く続けて潜ることができるからだそうです(注:1回に潜れる時間ではなく、潜水漁をする延べ時間)。

海女漁のはじまり
 北限の海女で有名な小袖地区は男は外漁、女は内漁という区別がされていましたが、明治時代になり航海技術が発達すると、男達はより収入の良い遠洋漁業にでかけるようになりました。また遠洋漁業から帰ってきてもすぐに北海道や青森、宮城といった地方に出稼ぎに出てしまいほとんど家にいる時間は無い状況になってしまいます。男性達が留守の間家を守っているのが女性達ですが、男達が帰ってくるまで収入はありません。従前までは浅瀬でワカメや昆布、貝類を採って加工したり、煮干しを作ったりして収入を得ていたのですが、より多くの収入を得ようとある日ある女性が海に潜ってウニやアワビを捕るようになったそうです。この女性こそ北限の海女さん第1号です。そしてまわりの女性達も一緒に海に潜って海女漁をするようになりました。当時は水中眼鏡など便利なものなどなく潜る深さも「1尋(ひろ)」程度だったと記録に残ってますが(1尋は大人が両手を広げた長さ)、やがて出稼ぎに出ていた男達が水中眼鏡を買ってくると潜る深さも格段に向上し4〜5尋まで潜るようになったそうです。

漁から観光へ
 昭和30年代になるとウニやアワビといった海産資源が減少し海女漁を観光資源にしようとする試みが企画され「海女クラブ」が結成されます。当時の海女さんの衣装は上半身裸で下半身は「たすき」のようなものをぶら下げ大事なところは隠していたそうですが、取材のカメラマン達が訪れるようになると留守である旦那に気を遣い現在のような「かすりはんてん」を着るようになったそうです。ちなみに「あまちゃん」では漁協が観光目的でわざと海女さんの胸が見えるように仕掛け「故:蟹江敬三」さん演じる天野中兵衛が「オラ達は遠洋漁業に出ていて見たくても見れねぇんだぞ(海女さん達の胸を)!」と漁協長に詰め寄り、それを見ていた宮本信子さん演じる天野夏が惚れて結婚するというストーリーになってます。

現在
 現在は収穫量の減少や資源保護の為に漁をする日数が限られている等の理由により、漁を目的とした海女さん漁はあまり行われず、海女さんの人数も少なくなった為、観光目的の海女漁が主体となっていますが「北限の海女」は貴重な日本の風土、文化資源として受け継がれているのです。なお「あまちゃん」では遠洋漁業に出ている天野中兵衛は自由奔放で妻であり海女さんでもある天野夏は頑固だけど一途な女性に描かれていますが、小袖地区の男性達は留守中家を守っている女性には頭が上がらず、遠洋漁業や出稼ぎから帰ってくると、妻から小遣いが入った財布をもらいそれを首からぶら下げてつかぬまの休みを楽しんだそうです。遠洋漁業や出稼ぎで大金を稼いできても、家を守っている女性達には頭があがらない。このような光景を見た町中心部の人達は「小袖の海女は気が荒い」とか「小袖の家はどこもカカア天下だ」と噂し、そのようなイメージが今でも定着しているのだそうです。

北限の海女


海女さんの実演


 海女さん達の実演は東日本大震災後、2013年度から前年度に整備したプレハブで夏からの営業に備えていましたが、NHK朝ドラ「あまちゃん」の影響で本来休業期間のGWにも全国からたくさんの観光客が訪れた為、急遽営業を開始し海女さん達もイカを焼いたり、ウニの潮汁を暖めたりと海ではなく陸の上で大活躍したそうです。
 また現地では現役海女さんで構成される「海女クラブ」のほかに「高校生海女クラブ」という地元女子高生の海女さんも7月中旬から9月末まで登場し、かすりはんてん姿で案内役を務めています。この「リアルあまちゃん」は観光客からツーショットの記念撮影を求められたりと大人気で、夏には海に潜ってウニ漁の実演もしてくれます。

海女さんの実演
料金 予約制(0194-54-2261 小袖海女センター)
 実演見学 500円/人
 実演 10名以上で500円/人 10人未満の場合海女一名5,000円

実演期間 7月〜9月

駐車場
 シーズン中は漁港が駐車場として開放され100台前後駐車可能となっています。


実演の光景

久慈市 北限の海女さんの実演 北限の海女さん達の実演。海女センターでは「実演」と「見学」のコースがあるが、実演は海女さんが海に潜り捕ってきたウニを殻剥きし、その場で食べることができるもの。見学とはその名のとおりただ見ているだけ。


北限の海女

実演 会場

久慈市 ウニ漁の実演場 海女センターの展望所からみた海女さんの実演場。眼下の階段はドラマ「あまちゃん」でヒロインあきや海女軍団が上り下りしていた階段で、左の橋下の水路はドラマの冒頭アキの祖母なつが初登場した所。

リアルあまちゃん

小袖海岸のリアルあまちゃん  小袖地区にある海女センターで観光客の案内をする海女さん。正確には本物の海女さんではなく、観光用に地元高校生や市民が「かすりはんてん」を着てお手伝いをしているもの。それでも観光客には大好評で、みな目を細めて説明を聞いていました。

記念撮影

北限の海女 記念撮影  記念撮影用の看板。看板に記されている「じぇじぇじぇー!」は小袖地区の方言で驚いた時に使われます。「あまちゃん」では数多く使用され、今では久慈観光のキャッチフレーズ的な言葉となっています。

北限の海女


小袖 海女センター


 久慈市の海女センターは北限の海女さん達の実演が見られる観光施設。2010年に建物を新築しましたが2011年の東日本大震災の津波によって施設を流され現在の施設は2014年に再建されたもの。施設は北限の海女さん達の実演やイベントとして使用されているほか、物産店や北限の海女さん達の歴史、文化などを紹介するコーナー、レストラン、展望所などが整備されています。


開館時間 9:00〜17:00
入館料 無料 
所在地 久慈市宇部町24-110-2


小袖海女センターの光景

小袖海女センター 2014年に再建された小袖海女センターの光景。津波で流される以前の建物と比べるとモダンで頑丈な造りとなっており、海女さん達のウニ漁を見ることができる展望所も設けられています。
小袖海女センター 館内の光景 こちらは海女センター館内(2階)の光景。北限の海女さん達の歴史や文化を紹介しています。このほか1階は物産店、3階はレストラン、屋上が展望台となっており、建物の外周にはスロープ状の通路が設けられています。

北限の海女

展望所

小袖海女センター 展望所の光景 小袖海女センター展望所の光景。白くデザインされたテラス状の展望所からはNKH朝ドラ「あまちゃん」の舞台となった北三陸の海を一望することができます。



震災直後の光景

久慈市 小袖海岸の海女センター 東日本大震災後、プレハブとテントで営業を再開した頃の光景。この年あまちゃん元年ともいえる2013年は、従前までは通常月間最多来客数が2000人ほどだったものが、GW前半の3日間だけで2608人もの人が訪れたそうです。


小袖海岸(袖が浜)


 小袖海岸は日本最古の地層を露出させた断崖絶壁が続く久慈市の景勝地。つりがね洞や夫婦岩をはじめとした大小様々な奇岩が見られます。この奇岩が続く海岸線はウニやアワビの好漁場ともなっており、北限の海女さん達が活躍する海としても有名です。平成23年度には三陸復興国立公園にも編入され、小袖海岸沿いの道路は「みちのく潮風トレイル」に指定されています。
 なおNHK連続テレビ小説「あまちゃん」では小袖地区を中心にロケに使用され「袖が浜」という地名で登場しています。このためあまちゃんフィーバーが吹き荒れた当時は訪れる観光客が急増してしまい、土日祝日は交通規制がかけられるほどの大盛況となりました。


小袖地区

小袖地区の光景  北限の海女さん達が生活する小袖地区。NHKの朝ドラ「あまちゃん」では袖が浦地区(小袖海岸がロケ地)は周辺に駅があり比較的開けた地域のように描かれていましたが、実際はこのような小さな集落となっています。少々分かりにくいですが中央の坂道が「あまちゃん」で海女軍団が毎日降りてきた坂で、右側の坂がオタク軍団が駅から駆け下りてきた坂道。また中央やや左側にある白い建物が漁協として使われた建物です。

北限の海女

夫婦岩(めおといわ)

小袖海岸の夫婦岩 海女センターのすぐ隣にある夫婦岩。2つの巨岩は船を繋ぐロープで作ったしめ縄で結ばれています。このしめ縄は東日本大震災時の大津波にも耐え残ったことから「縁結びのご利益」があると言われており、ドラマ「あまちゃん」ではバックシーンとして何度も映っています。

恵比寿様

海女センター入り口にある恵比寿様  海女センターの入り口に祀られている恵比寿様。この鳥居はドラマあまちゃんでオープニングに映っている他、袖が浜地区の撮影シーンでは何度も映り込んでいます。その為か祠前に置かれた小さなお賽銭箱には小銭がたくさん入っており、参拝客(観光客)が多い事がうかがえました。また通常は鈴がぶら下がっている紐には鎮魂の意味(東日本大震災の)でもあるのかベルがぶら下がっており、鳴らすと港中に透き通った音が響きます。

つりがね洞

小袖海岸 つりがね洞から見た朝日 小袖海岸のつりがね洞から見た朝日。かつては釣鐘のような岩がぶら下がっていたそうですが、明治時代の三陸大津波で崩れ落ちてしまったそうです。なお小袖地区の夫婦は亡くなった後、このつりがね洞で落ち合い冥土に旅立ってゆくといわれています。
久慈市 つりがね洞 つりがね洞を道路から見た光景。まさか明治時代の津波で崩れた岩の跡ではないと思いますが、岩の下は細かく砕かれた石で覆われていました。

北限の海女

小袖海岸の光景

岩手県 小袖海岸の光景 大小様々な奇岩が並ぶ小袖海岸の光景。花崗岩の岩礁がキノコやサボテンのように海から突き出ています。このような岩礁や海中の洞穴はウニやアワビの住処となっているほか、波がぶつかり酸素が海中に供給され豊かな海を育んでいるのです。「あまちゃん」効果で影が薄れてしまいましたが、従来小袖地区はこのような奇岩絶景の景勝地として知られていた所です。なおご覧の光景に見覚えのある方もいると思いますが、ここはあまちゃんのオープニングで用いられていた光景です。

久慈市 小袖海岸周辺の道路 小袖海岸がある海岸線の道路。海女センターを含む周辺の道路は道幅が狭く乗用車でもすれ違いできない区間が多い。そんなところに「あまちゃん」効果でたくさんの観光客が一気に訪れたものだから2013年の春は大騒ぎになってしまいました。けど交通規制を行い、市中心部に臨時のバスや駐車場を整備するなど行政の対応は素早く大きな混乱にはなりませんでした。

野田村から見た小袖海岸

野田村から見た小袖海岸 野田村方面から見た小袖海岸。正確には小袖海岸は久慈市側から見ると三陸海岸に突き出た半島の裏側に位置します。半島は断崖絶壁が続いており、所々にある入り江に港や集落が点在しています。
やませに覆われた小袖海岸 ヤマセに覆われた小袖海岸がある半島。半島をすっぽりと覆っているのが三陸海岸名物のやませ。小袖海岸周辺は三陸の海に突き出ているので、やませもぶつかりやすく。周辺でやませが発生したときは必ずといってよいほど小袖海岸にも吹き付けてきます。