世界遺産 姫路城(白鷺城)



 姫路城は平成5年に日本初の世界文化遺産に指定された国宝です。世界遺産の登録理由は「17世紀初頭の日本の城郭文化を代表す建造物」で、天守をはじめとした櫓や城門、石垣など当時の建築物が良好に保存されてていることや、城の美的完成度が非常に高く日本独自の文化がよく現れている事なども理由となったそうです。


白鷺城
 白鷺城とは姫路城の別名です。名前のはっきりとした由来は分かってませんが一説にはその昔姫路城は白い漆喰が塗られその白さが白鷺にも勝る美しさだったことから名付けられたといわれています。近年は漆喰も黒ずんで往年の美しさを見ることができませんでしたが2009年から始まった平成の大改修で漆喰が塗り直され真っ白い白鷺の城が再び姿を現しました。なおこの漆喰にはやがてカビが生え時間と共に白さも失われまた元の色に戻るのだそうです。


 世界遺産登録の理由のひとつともなった400年もの歴史をもつ姫路城。この長い歴史の中には数々の言い伝えや伝説が生まれ現在に語り継がれています。どれも結構有名なお話なので皆さんも聞いたことはあると思いますが代表的なものを以下に紹介していきます。 

刑部姫


刑部大明神  刑部姫は姫路城の天守に住むといわれる地主神で、その正体は築城の際に人柱となった女性、キツネ、大蛇と諸説あります。言い伝えでは日女道丘(ひめじのおか)の地主神で日女道丘に城が建てられてしまったので(姫路城)そのまま城に住み着いたとされ、刑部姫を粗末にあつかった城主に呪いをかけお話をはじめとして姫路城の歴史を語るうえでは必ず登場する重要な神様となっています。
 刑部姫は年に一度城主と会い城の命運を告げるとされており、400年以上もの間城が戦火や災害に遭わなかったのはこの刑部姫のおかげともいわれています。また太平洋戦争時に米軍の焼夷弾が刑部姫が住む天守閣に命中したが不発弾だった為、難を逃れたということもあり城にとってはまさに大切な守り神とされています。なお刑部姫は現在姫路城の天守閣に刑部大明神として祀られています。


幸運の出世城


幸運の出世城 姫路城 日本の城は落雷、地震、大火のほか明治維新の廃城令や戦火、そして太平洋戦争の空襲などで当時のまま残されている城郭は数えるほどしかありません。そんな中で姫路城は交通の要衝にありながら一度も敵に攻め込まれた事のない幸運の城として知られています。さらに羽柴秀吉が中国地方攻略の為の拠点として居住し、備中高松城の水攻め、そして本能寺の変後の「中国大返し」を経て天下人へと登り詰めていく際の拠点だった事から「出世城」と呼ばれているのです。

宮本武蔵の妖怪退治


姫路城大天守内部の光景 もともと姫路の地の地主神だった刑部姫ですが、そこに城を建てられてたので天守閣に住み着くようになります。元来人があまり出入りすることの無い天守に現れる刑部姫を見て人々は妖怪と恐れおののきますが、折しも城の足軽奉行をしていた宮本武蔵に妖怪退治が依頼されます。刑部姫の前に現れた宮本武蔵を見て姫は名刀 義弘を手渡し「私は姫路城の守護神です。この刀を渡すので妖怪は逃げ去ったと皆に伝えなさい」といいます(妖怪は刑部姫とは別で刀は妖怪退治のお礼にもらったという言い伝えもあります)。妖怪の正体が城の守護神でなおかつ天下に名だたる名刀をもらえるとあって宮本武蔵は姫の言うとおりにし、その後武者修行の旅に出かけたそうです。

※宮本武蔵の妖怪退治は年代的に辻褄があわない部分が多く後世の作り話とされていますが、刑部姫を天守閣に住む妖怪として描いてる言い伝えは他にも複数あります。


お菊井戸


お菊井戸 室町時代、時の姫路城城主小寺則職の家臣青山鉄山が謀反を企てていましたが、これを同じく家臣である衣笠元信が気づき自分の妾だったお菊という女性を鉄山の家に女中として送り込み計略を探らせます。やがて青山が則職を毒殺しようとしていることを突き止めると、青山鉄山の子供、青山小五郎は則職を救出します。主家乗っ取りに失敗した鉄山は密告者がいるとにらみ家来の町坪弾四朗に調査させたところお菊が密告者であったことを突き止めます。以前からお菊のことが好きだった弾四朗は妾になれと言い寄りますがお菊は拒否し立腹した弾四朗は、お菊が管理を委任されていた10枚揃えないと意味のない家宝の皿のうちの一枚をわざと隠してお菊にその因縁を付け、とうとう責め殺して古井戸に死体を捨ててしまうのです。 以来その井戸から夜な夜なお菊が皿を数える声が聞こえてきたということです。その後鉄山一味は衣笠元信達によって討たれ、則職はお菊の事を聞き、十二所神社の中にお菊を「お菊大明神」として祀ったということです。

まだまだあります姫路城のエピソード


将軍坂
 将軍坂はTVドラマ暴れん坊将軍のエンディングに使用されたことから名付けられた坂で(正確には石段になっています)「は」の門へ続く坂の先では城壁の向こう側に美しい天守閣の先端を見ることができます。

国宝を傷つけた007
 姫路城は映画「007は二度死ぬ」のロケにも使用されています。敵の忍者部隊の本拠地として登場し忍者の装束を身につけたジェームスボンドは忍者部隊と大立ち回りを演じています。この撮影の最中に国宝である姫路城の城壁を傷つけてしまい以後姫路城では映画の撮影は一切許可されなくなったそうです。007は姫路城で撮影された最後の映画というわけです。ちなみに当時傷つけられた城壁は立腹した姫路館長が映画会社に全部きれいに修繕させて現在は確認することができません。