三十三間堂の「通し矢」と「大的大会」



 江戸時代の通し矢にちなむ「大的大会」は成人を迎えた若者が弓矢の技術を武道の聖地ともいえる三十三間堂で競う初春の風物詩です。


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通し矢


 通し矢はその始まりははっきりとしていませんが桃山時代に行われていたと記録が残されており、お堂西縁の南端から120メートルの距離を弓で射通し、その矢数を競ったものです。特に江戸時代に流行した「通し矢」は夕刻に始めて翌日の同刻まで、一昼夜に何本通るかを競うもので、軒下を通すことから「通し矢」と呼ばれるようになりました。通し矢は軒天井に当たらぬよう矢を射抜く必要があるので強弓を強く射なければ軒下を射通すことができないことから弓術家ひいては武家の誉れとして、各藩が自らの威信をかけて武芸者を送り込み、特に尾張、紀州の二大雄藩による功名争いは人気を呼び、京都の名物行事となりました。
 なお通し矢の優勝者には「天下一」の称号が与えられ、最高記録は貞享3年(1686)4月に記録された紀州藩 和佐大八郎(試技年齢は18歳という)の総矢13,053 本、通し矢8,133本となっています(なんと弓を射る間隔は6秒間に1本の計算)。 
 この通し矢大会は江戸時代前期に最盛期となり、多くの弓術家が挑戦して記録更新が相次ぎましたが、江戸時代中期以降は大規模な通し矢競技は行われなくなっていきました。


大的大会


大的大会 三十三間堂 弓術家達の誉れとされた通し矢。その伝統を今に伝えるのが「大的大会」です。現在は1月15日に一番近い日曜日に「楊枝のお加持」大法要と共に行われています。古の通し矢とは異なり本堂西側の射程60mの特設射場で矢を射る「三十三間堂大的全国大会」として行われます。
 ニュース番組などでよく紹介される新成人参加者が振袖袴姿で行射する場面はこの大的大会の光景です。全国から集まった約2000人もの晴れ着姿の競技は春らしく華やかで、早春の京都の風物詩となっています。なお入場見学は誰でも自由で無料ですが大会の参加資格は以下のようになっており成人なら誰でも参加できるわけではありません。


大的全国大会 詳細情報

開催会場 三十三間堂内特設射場
 
開催日 毎年1月中旬の日曜日(1月15日に一番近い日曜日)

参加資格

@開催の年度に新成人なる人

A大会の登録期限である前年の9月30日までに初段以上を有していること

B成人以外の一般の参加は、範士や教士など武道における称号を持っていること

申込み方法 京都府弓道連盟に直接申込む

問い合わせ先  075-692-3484(京都府弓道連盟)


通し矢 うんちく


 三十三間堂南側の柱や壁にはいくつかの穴が空いていますが、これは弓の弦を張り替えるときにできた穴です。
 また喪堂縁側中央付近の垂木(たるき・棟木などの上に斜めに掛けられる斜材)には何故か1本の矢が刺さっています。これは、江戸時代のものではなく昭和になってから刺さったものとされ。なんらかの機会に通し矢を射た時に、射損じて刺さったものと推測されています。
 皆さんも三十三間堂を訪れた際にこれらを見る機会がありましたら是非ご覧になってみて下さい。