熊野古道 観光案内 「伊勢路」



 紀伊半島西側を通る紀伊路〜中辺路が公式参詣路だったのに対して反対側を通る伊勢路は裏道的な存在の道で、度々熊野に詣でたことで知られる平清盛も平氏の本拠地が伊勢であったことから若い頃はよくこの伊勢路を利用していました。
 江戸時代になると庶民の間でお伊勢詣りが盛んになり伊勢神宮に参拝した後、さらに足を伸ばして熊野詣をする人も増え伊勢神宮と熊野を結ぶ庶民の参詣道として活況を呈しました。
 現在はその参詣道もその大部分が国道やJRに取り込まれてしまい世界遺産からも外されてはいますが、おすすめのコースもいくつか残っているので以下に紹介します。

伊勢路 路線図



ツヅラト峠


所要時間4時間 距離9.5km 難易度 健脚
 JR紀勢本線の梅ヶ谷駅と紀伊長島駅を結ぶ峠道です。ツヅラト峠は昔の国境だった峠で伊勢方面から向かうと初めて熊野灘が視界に飛び込んでくる所で昔の人も感嘆の声をあげたであろう熊野灘の眺望が楽しめます。道は昭和初期まで生活道として利用されていた為か保存状態の良い石畳、石段の道が続き古道の雰囲気を味わいたい人にはおすすめのコースです。


相賀駅〜尾鷲駅


所要時間3時間 距離7km 難易度 普通
 大正時代までは県道だった約2kmの石畳の道が特徴の古道で、初めと終わりは国道を含めた一般道となっています。道中道の駅やトイレ、バス停などもあり気軽に古道の雰囲気を味わいたい人におすすめです。


新鹿駅〜有井駅


所要時間5時間30分 距離14km 難易度 普通
 秦の始皇帝の命を受け不老不死の霊薬を求め蓬莱島へ旅立ったがついに帰らなかった徐福伝説が伝わる波田須の里を通るコースです。道中は前半が国道と古道とを交互に進むコースとなっており、後半は松本峠や世界遺産の鬼ヶ島など見所満載の人気おすすめコースとなっています。なおこのコースは中間地点の大泊駅で二分することも可能で、後半の大泊駅〜有井駅については別途「熊野古道 おすすめルート」で紹介しています。


風伝峠


所要時間3時間30分 距離9.5km 難易度 健脚
 後半、日本の原風景 棚田百選にも選ばれている「丸山千枚田」が楽しめるコース。古道も苔むした道が多く雰囲気を十分楽しめます。難易度は「健脚」としましたが、途中国道を介してショートカットが可能なので疲労がひどい場合は距離の短縮も可能な筆者個人的にはおすすめのコースです。


平清盛が受けた熊野権現のご利益


 平清盛は父忠盛が熊野本宮造営をした賞により20歳という若さで肥後守になっており、以来度々熊野を訪れています。最初の頃は前述してあるとおり本拠地の伊勢から伊勢路を通って熊野に訪れており、ある日時熊野灘を舟で移動していると大きな鱸が舟に飛び込んできます。熊野詣は精進潔斎の道で道中、魚や肉、ネギなどは口にすることはできず清盛一行も精進潔斎を守ってきたのですが、ここで熊野の修験者が「昔、周の武王の船に白魚が躍りこんだという。おそらく、これは熊野権現の御利益と思われます。召し上がりなさい」と申しました。そこで清盛は自ら鱸を調理し皆で食べたのです。このことで熊野権現にご利益を取り込んだのが、以後の清盛をはじめとした平氏の繁栄は皆が知るところです。清盛は武士という当時は低い身分でありながら昇殿を許され太政大臣まで登り詰めます。また一族も多くが官位を授かり天皇まで輩出(安徳天皇)。まさに繁栄の絶頂をむかえるのです。