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奥入瀬渓流 旅行記「苔(コケ)」



 日本人ほど「苔(コケ)」に風情を感じる民族はいないといわれていますが、奥入瀬渓流区域内は約200種類の苔が渓流の岩、倒木、はては遊歩道の手すりにまで生えている「モス パラダイス」(苔の楽園)なのです。苔の育成には十分な水分が不可欠ですが、奥入瀬渓流では渓流の水しぶきのほか、十和田湖で発生した霧が唯一の流出河川である奥入瀬渓流から流れ出て渓流沿いを常に潤してくれることも苔の生育に影響しているそうです。
 この苔の森はまるで恐竜たちが動き回っていた白亜紀、ジュラ紀のような光景で、従前までは一部の愛好家の間でのみ親しまれていたのですが、近年になり元プロレスラーという異色の経歴を持つ起田高志(おきたたかし)さんが苔玉工房を開き話題となっていることや、 日本蘚苔(せんたい)類学会から「日本の貴重なコケの森」に認定された事なども受け、苔を観光資源にしようとする取り組みが試みられ一般的に知られるようになりました。
 なお個人的な感想ですが苔の見頃は(一番美しく見えるのは)春から夏にかけて十分に水分を取り込み大きく茂った秋口の頃だと思います。


苔玉

 
奥入瀬渓流の苔玉(モスボール) 元プロレスラーという異色の経歴をもつ起田高志さんの工房「奥入瀬モスボール工房」の苔玉(モスボール)。工房は奥入瀬渓流館の館内にあり、館内入って左奥の方を見渡すと苔にちなんだ緑の帽子と服をきたごつい体の男性の姿が見られるのですぐにわかります。ちなみに苔から生えている植物は生きており、ちゃんと育てると苔と共にこのまま成長を続けます。




苔と渓流


奥入瀬渓流の苔 秋が深まる奥入瀬渓流。たえず水しぶきがかかる渓流の岩や倒木には苔が繁茂しています。この苔生した光景が奥入瀬渓流の渓流美をいっそう引き立たせており、茂った苔の厚さは3センチほどになる場合もあるそうです(実際に計ろうとすると苔を傷つけてしまうので皆さんは行わないで下さい)。なおガイドの方の話だと苔は踏んだり掴んだりするのはダメですが、軽く触れて感触を楽しむのはOKとのことでした。


奥入瀬渓流 苔生した石  遊歩道から見た奥入瀬渓流。苔生した岩の間を縫うように清流が流れていきます。このような苔生した石は石ヶ戸をすぎた辺りから多く見られるようになります。

橋に生えた苔


奥入瀬渓流 遊歩道の橋 奥入瀬渓流にかかる遊歩道の橋。長年にわたり多数の観光客が通った橋は苔とキノコに覆われていました。奥入瀬渓流を散策するとこのような苔生した橋やベンチを多数見ることができます。

※近年は「本来人間が利用するはずの手すりやベンチに苔が繁茂し人が利用できないのは管理者の怠慢でおかしい」という意見や批判も見られるようになり、「老朽化」を理由に新品と交換された所もあります。


倒木と苔


奥入瀬渓流の倒木と苔 奥入瀬渓流の倒木に生えた苔。奥入瀬渓流はよく見てみると倒木の数が非常に多い。これは冬の厳しい気候によるものだといわれていますが、渓流に倒れた倒木は苔の絶好の繁殖地となり時には幻想的な光景を見せてくれます。

十和田湖の霧


十和田湖の霧 十和田湖に立ち込めた霧。右側に見える建物は標高600mほどの所にある発荷峠展望台で湖面は遥か下にあります(十和田湖水面の標高は400m)。この大量に貯まった霧が唯一流れ出ることができる場所が奥入瀬渓流なのです。

奥入瀬渓流の苔(コケ)について


 奥入瀬渓流で見られる苔の群生は長い年月をかけて形成されたもので、興味本位で歩道の手すりに生えた苔を剥がしたり、誤って踏みつけたりしてしまうと元の状態に復元するまで相当の年月を要します。このような状況を知ってか知らずか最近は苔が荒らされるケースが多々あるのだそうです。一番多いのはマナーの悪いカメラマン達で、良い写真を撮ろうと滑り止め付きの登山靴で苔を踏みつけ立ち入り禁止区域に入っていった結果、苔が岩や倒木から剥がれてしまうというわけです。また奥入瀬渓流自体国立公園に指定されており、動植物を採取したり持ち帰える行為は禁止されているにもかかわらず、不法に苔を持ち帰る人も後を多数いると推測されています(奥入瀬のモスボール工房で使用される苔は園芸業者から購入しているもので奥入瀬渓流の苔ではありません)。奥入瀬の苔の魅力に多くの人が気がついてきた昨今、私達旅行者一人一人も意識を改善し奥入瀬の苔を保全していく取り組みも大事なのではないでしょうか。