立石寺の岩
立石寺の数多くの寺社はその多くが巨大な岩の上に建てられており、参道も切り立った岩の間を沿うように設けられています。
これら数々の岩は雨風による長年の浸食により神秘的な光景となり、立石寺における信仰の対象のひとつとなっています。
岩(岩窟)
岩窟(岩)

山寺・立石寺の仁王門の左手にある岩山。岩山の穴や穴の中の石塔には古い人骨が納められており、仁王門から山頂にかけて、このような岩(岩窟)がよく見られるようになります。
弥陀洞
弥陀洞(みだほら)。雨風に削られ風化した箇所を彫ったもの。岩壁の風化した部分の光景は人によっては阿弥陀如来の姿に見えることもあり、阿弥陀如来に見えた人は幸せになれるとされています。仁王門のすぐ近くにありセットで写真を撮る方も多くみられます。
慈覚大師円仁伝説
立石寺の開基として知られる慈覚大師円仁は天台宗開祖最澄の弟子で比叡山三代目座主にして天台密教を完成させた人物です。円仁は東北地方との関係が非常に深く、立石寺の他に
恐山、
中尊寺、
毛越寺、
瑞巌寺など
東北の名だたる古刹の開基といわれており、円仁の開基、中興したと伝えられる寺院は東北地方に162寺もあり、円仁が関係する仏像などの遺芳があるのは169寺もあります。円仁は確かに829年〜830年にかけて東北巡錫していますが、わずか1年あまりの間にたくさんの寺院を開山するのは不可能ですし、寺社に伝えられている開基の時期と東北巡錫の時期が一致しないものも多数あります。この為多くの言い伝えが、天台密教を大成させた第一人者である円仁に結びつけた伝説、もしくは円仁に関係のある人物(例えば円仁の弟子にあたる安恵など)が開山したものと考えられています(注:開山=開基が一般的な考え方ですが、経済的支援を行った者を開基とする考え方もあります)。
そんな東北に数多く残る円仁伝説のなかでもっとも信憑性があり、かつ不可解な言い伝えが「
円仁の遺体は比叡山で埋葬されたが首は金棺に納められ立石寺の霊窟に安置されている」というものです。このことは多くの文献に記されており、日蓮宗の開祖である日蓮上人が記した手紙でも確認することができます。ではなぜ首だけ立石寺に安置されているのでしょう。またこのことは事実なのでしょうか?実は昭和23年に実際に霊窟に入り調査が行われています。ここでは調査結果だけ忠実に報告しておこうと思います。
まず霊窟というのは
納経堂の真下にあり現在は入定窟とよばれている洞窟の事をいい、その洞窟の中には確かに御棺が納められていたそうです。立石寺の岩窟には古い人骨が納められていますがわざわざ御棺に入れられていることから位の高かった人物が安置されていることが予想されます。そして御棺の中には熟年男性及び老年男性の火葬骨、熟年女性、老年男性、熟年以上男性の頭部の無い非火葬骨など計5体の人骨が納められていたそうです。そして一番注目されたのが男性の顔を彫った木像彫刻も一緒に納められていたことです。この木像はかなり実写的で生き生きとしており、現在は円仁のものといわれています。
これらの調査結果を基に「円仁の首は胴体とともに比叡山にあり、円仁が開山した立石寺の求めに応じて首の代わりに頭部木像を送ったのではないか」という説や、「実は立石寺にあるのは円仁の胴体で首は入滅した地である比叡山にあり、立石寺の頭部木像は比叡山にある首の代わりに安置されたもの」という説まで様々でましたが、実際のところ確かなことはまだ分かっていないそうです。
五大堂とその周辺の光景
五大堂とは五大明王を安置するお堂で
立石寺においては境内東側に突き出た百丈岩と呼ばれる岩山の上に建てられています。有名な山寺からの眺望はまさにこの五大堂からの眺めで立石寺随一のビュースポットとして人気があります。百丈岩の上にはほかにも立石寺山中ではもっとも古い建物でシンボル的存在の納経堂や開山堂などがありますが、納経堂の真下は入定窟(にゅうじょうくつ)になっておりそこには慈覚大師の遺骨が棺に納められて眠っていると云われています。
五大堂

山寺・立石寺の五大堂。
五大明王が祀られており天下泰平を祈る道場であると共に山寺随一の展望台でもあり、山寺でもっとも観光客に人気があるビュースポットの1つ。

五大堂からの眺め。息を切らしながら
1015段の石段を登ってきた苦労も吹き飛ぶ光景です。この五大堂からの眺めを見に多くの観光客が訪れます。
五大堂堂内の光景。五大明王が祀ってある堂内にはたくさんの御札が貼られています。なお五大堂は展望台にもなっており、後ろを振り返ると前述の原風景が見渡せます。
納経堂と開山堂

立石寺の納経堂(左)と開山堂(右)。納経堂と開山堂は百丈岩と呼ばれる大きな岩の上に建てられており、眼下には山寺周辺の街並みや山河が広がります。

立石寺の納経堂。百丈岩の入定窟の頂に建っています。この納経堂周辺の光景は山寺一番のビュースポットで誰でも一度は雑誌やパンフレットで見たことがあると思います。
開山堂

立石寺の開山堂。山寺を開いた慈覚大師のお堂で慈覚大師の木像が置かれています。ここから左手には山寺随一の景観といわれる納経堂が、右手には展望台でもある五大堂があります。
立石寺の仁王門
立石寺の仁王門は登山道(参道)のほぼ中間地点にあり、いままで自然豊かだった
石段の道も仁王門をくぐると
奥の院や開山堂、納経堂といった数々の建物が見え光景が一変します。また周辺には岩窟や弥陀洞といった神秘的な造形物も多数有り、いよいよ霊場山寺の核心部分へと近づいてきたことが実感できます。
なお仁王門をくぐると休憩所があり一休みすることができ、なかには疲れて仁王門から引き替えてしまう方も見られます。しかし立石寺の見所の多くはこの仁王門の先にあるといっても過言ではなく、ここまできたら迷わず先に進むことをおすすめします。
仁王門

立石寺の仁王門を下から見上げた光景。嘉永元年(1878年)に再建されたけやき材の門で、仁王像は運慶の弟子たちの作といわれています。仁王門の奥に見える岩が有名な開山堂や入定窟がある百丈岩。

こちらは仁王門を真正面から見た光景。参拝道のほぼ中間点にありますが、奥の院や開山堂といった数多くの有名な見所はこの仁王門をすぎてから出てきます。もちろんケヤキ造りの仁王門も山寺を代表する建造物のひとつです。